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むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
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「終わ、った」 
 元に戻った屋上で、私は思わずその場に座り込んだ。 

「お疲れ様」 
 カナリアが労いの言葉をくれた。私は空を見上げる。 
 真っ青な空が、夏も目前の空が視界いっぱいに広がる。真っ白な雲がゆっくりとその中を流れていた。 
「綺麗な空だね」 
 さっきまでの寒さはもう跡形もない。傍らからサクラが空に飛び立った。冬の寒さから解放されたことを喜んでいるように見えた。空のどこかで、鳥がさえずる声がした。 
「ごめんね、カナリアも」 
 そう口にしてから、思い直して首を振る。 
「きっと、謝って済む問題じゃないよね」 
「何が、かしらね?」 
 そう言って苦笑した。優しい微笑みだった。私はそこでやっと気がついた。 

 ああ、そうか。 

 カナリアは最初から私を責めたりしなかった。私が人間であっても。自然を虐げてきた、存在であっても。 


 少しの間空を見上げて、またすぐに立ち上がる。 
「さて、行こうか、カナリア。休んでる暇なんてない」 
 驚いたように首を傾げる彼女。私は手の中のピースを掲げて見せた。 
「破片、空に返すんでしょう?」 
「あなたが嫌なら、正式な所有権放棄も考えていたのよ」 
 感心した口ぶりのカナリア。確かにここに来るまでの私は積極性に欠けていたと思う。でもそれは、実感がなかったからに過ぎない。 
「行くよ。私が返しにいく」 
 今は違う。この手にあるピースだって、空の破片だということを心の真ん中から理解してる。そして、どれだけ大切なものかも。 
 ビンのフタを回して開ける。手を開いてビンをさかさにすると、手のひらにコロンとピースが飛び出した。 
 それを、壊してしまわないように大切に握って。 

「そうね、行きましょうか」 

 カナリアが手を上げると、サクラが彼女の元に戻ってきた。
 再び肩にハトを乗せて、私を振り返る。 


「空へ」 


 そう。まだやることは、残ってるんだから。 

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詳しくはFirstを参照ください。
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