むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
「あ、やっぱり結衣だぁ」
そこに立っていたのは、制服姿の友人が二人。毎日一緒にお昼を食べる顔だった。
「梨紗、智美? どうして?」
「部活の帰り。そしたらちょうど梨紗と会ってさ」
「じゃあ結衣も呼ぼってことになったのに。連絡取れないと思ったらこんなとこにいたのね」
二人共、通りの方から私を見つけて声をかけてくれたらしい。
慌ててケータイを取り出すと、確かにメールが二件、着信は三件入っていた。どれも相手は智美と梨紗。どうも、冬探しに懸命で気がつかなかったみたいだ。
「ところで、その子は? 妹…じゃないよな。外人さんぽいし」
智美が私の前に座る少女を見て尋ねる。
「えっと…その、彼女は」
どう答えればいいか迷って、ついカナリアのほうに視線をやる。すると、彼女が代わって口を開いた。
「カナリアよ」
簡潔。なんて彼女らしい。ケーキで機嫌が良いカナリアは可愛い顔に似合う微笑を友人達に向けた。
梨紗が微笑み返す。
「へえ、カナリアちゃんかぁ。はじめまして。なるほど、瞳も綺麗なカナリア色ね」
「カナリア色?」
「そうだよ。こんな青みを帯びた黄色をカナリア色っていうの」
ああ、そういう意味で『カナリア』だったのか。梨紗はよく色の名前が分かるなぁ。さすが美術部。
結局『最近知り合った友達』という適当な肩書きを捏造した。
「髪の色も不思議ね。とても素敵」
「ありがとう」
カナリアは完璧な笑顔で会釈を返した。『不思議』という言葉をちゃんと褒め言葉にとったらしい。
まぁ、梨紗のことだから勿論皮肉で言ったことじゃないけれど。
「不思議って言えばね、さっき駅前の通りで不思議な格好の人を見たのよ」
何か思うものがあったようで、ふいに梨紗が切り出した。
「不思議?」
いったいどういう風に『不思議』だったんだろう。私はよく考えずに復唱する。
「そ。灰色の髪に、灰色の上下でね」
灰色の髪。灰色の上下。
どこかで聞き覚えのある特徴のような。どこ…だったかな。
次の言葉が核心をつく。
「それから、もう夏も近いって言うのに、真っ白な毛糸のマフラー巻いてるのよ」
私とカナリアは勢いに任せて立ち上がった。
カナリアに視線を投げる。彼女も同時に私に目を向けた。
「間違いないわね」
「だよね」
「ゆ、結衣??」
突然のことに友人二人は目を丸くした。それも仕方がない。今まで笑顔だった私達が突然緊迫した雰囲気を作ったのだから、何事かと思っただろう。
やっと、見つけた。
私は友人達にフォローの笑顔を向けた。
「ゴメン、急いでるの、そろそろ行くね。あ、これ立て替えといてくれる? ちゃんと返すから」
ついでに伝票を智美に持たせて、テラスの生垣を分けて通りに飛び出した。風の如くカナリアが走り、サクラが先導するように羽ばたいた。
「え? え? 立て替えるって、あたしあまりお金持ってないぞ!!」
背後から智美の声が追ってきて、私は肩越しに手を振った。
「また月曜に!」
そこに立っていたのは、制服姿の友人が二人。毎日一緒にお昼を食べる顔だった。
「梨紗、智美? どうして?」
「部活の帰り。そしたらちょうど梨紗と会ってさ」
「じゃあ結衣も呼ぼってことになったのに。連絡取れないと思ったらこんなとこにいたのね」
二人共、通りの方から私を見つけて声をかけてくれたらしい。
慌ててケータイを取り出すと、確かにメールが二件、着信は三件入っていた。どれも相手は智美と梨紗。どうも、冬探しに懸命で気がつかなかったみたいだ。
「ところで、その子は? 妹…じゃないよな。外人さんぽいし」
智美が私の前に座る少女を見て尋ねる。
「えっと…その、彼女は」
どう答えればいいか迷って、ついカナリアのほうに視線をやる。すると、彼女が代わって口を開いた。
「カナリアよ」
簡潔。なんて彼女らしい。ケーキで機嫌が良いカナリアは可愛い顔に似合う微笑を友人達に向けた。
梨紗が微笑み返す。
「へえ、カナリアちゃんかぁ。はじめまして。なるほど、瞳も綺麗なカナリア色ね」
「カナリア色?」
「そうだよ。こんな青みを帯びた黄色をカナリア色っていうの」
ああ、そういう意味で『カナリア』だったのか。梨紗はよく色の名前が分かるなぁ。さすが美術部。
結局『最近知り合った友達』という適当な肩書きを捏造した。
「髪の色も不思議ね。とても素敵」
「ありがとう」
カナリアは完璧な笑顔で会釈を返した。『不思議』という言葉をちゃんと褒め言葉にとったらしい。
まぁ、梨紗のことだから勿論皮肉で言ったことじゃないけれど。
「不思議って言えばね、さっき駅前の通りで不思議な格好の人を見たのよ」
何か思うものがあったようで、ふいに梨紗が切り出した。
「不思議?」
いったいどういう風に『不思議』だったんだろう。私はよく考えずに復唱する。
「そ。灰色の髪に、灰色の上下でね」
灰色の髪。灰色の上下。
どこかで聞き覚えのある特徴のような。どこ…だったかな。
次の言葉が核心をつく。
「それから、もう夏も近いって言うのに、真っ白な毛糸のマフラー巻いてるのよ」
私とカナリアは勢いに任せて立ち上がった。
カナリアに視線を投げる。彼女も同時に私に目を向けた。
「間違いないわね」
「だよね」
「ゆ、結衣??」
突然のことに友人二人は目を丸くした。それも仕方がない。今まで笑顔だった私達が突然緊迫した雰囲気を作ったのだから、何事かと思っただろう。
やっと、見つけた。
私は友人達にフォローの笑顔を向けた。
「ゴメン、急いでるの、そろそろ行くね。あ、これ立て替えといてくれる? ちゃんと返すから」
ついでに伝票を智美に持たせて、テラスの生垣を分けて通りに飛び出した。風の如くカナリアが走り、サクラが先導するように羽ばたいた。
「え? え? 立て替えるって、あたしあまりお金持ってないぞ!!」
背後から智美の声が追ってきて、私は肩越しに手を振った。
「また月曜に!」
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