むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
「ここが…空…」
ドアを入った途端、体が宙に放り出された。
「ここが、天空」
無重力空間だった。
体が勝手にふわふわと浮かぶ。上と下が、右と左が分からなくなる。
私は漂いながら、辺りを一望した。
くぐってきた扉以外はすべて空。
そこにあるはずの宮殿も見当たらない。ただ青い扉が浮かんでいるだけ。
思い切って宙返りをしてみた。水の中にいるみたいで面白い。息は苦しくないけれど。
「このピースは…どこに?」
カナリアが扉を入ってくるのを待って、私はパズルを埋めるための穴を探した。
「あそこよ」
空の少女が、空の一角を指す。
彼女を追って私も空を歩く。ふわふわと雲のように漂いながら。鳥のように自由に、風の間を泳ぐ。
何か、トリックアートみたい。
でもここは空の上。私は今、地上より遥か高いところに浮いているんだ。
「…あった」
目的地は一目瞭然だった。
晴れた空と白い雲の間に一箇所だけ、何もない空間があった。
周りの空の色とは一段階薄い青色。地上からでは気がつかないかもしれないけれど、こんなに近くから見ればよく分かった。
抱えた破片と、目の前に開いた大きな穴を見比べる。私なんか簡単に吸い込まれてしまいそうなほど、大きなパズルの穴だった。
「ちゃんと向きも考えて、傷つけないようにね」
「うん。分かった」
私はパズルに両手を添えて、そっと穴に当てる。
これで終わり。今日一日の奇妙な探索も、全て終わり。
何もかもが元通りになる。
「…あれ?」
この穴で合ってるはずなのに、どう向きを変えても破片は空に収まらなかった。
ピースをくるくると左右に回しながら、ぴったりはまる場所を探す。
おかしいな。これで間違いないはずなのに。
「なってないわね。逆よ逆。裏返し」
空の少女が溜め息をついた。
私は慌ててピースを確かめた。
本当だ、手元の破片と青空の模様が合わない。雲の流れる向きが逆だ。あはは、と笑ってごまかす。カナリアが呆れたように首をすくめた。
「じゃあ、今度こそ行くよ」
破片をくるっと裏返しにして、あらためて空の穴に重ねる。
今度こそ。慎重に、壊してしまわないように。
パズルの形をした穴に破片を当てて、そして、ゆっくりと押し入れる。
これで終わり。
長い長い土曜日も、欠けた空も。
空は、私のものから、皆のものへと戻る。
皆で守るべきものへ。
そして、
…ぱちん。
パズルのピースがはまる音がした。
私は手を離す。
小さくて可愛い、乾いた音だった。
そして私は、私の体は、急降下を始めた。
ドアを入った途端、体が宙に放り出された。
「ここが、天空」
無重力空間だった。
体が勝手にふわふわと浮かぶ。上と下が、右と左が分からなくなる。
私は漂いながら、辺りを一望した。
くぐってきた扉以外はすべて空。
そこにあるはずの宮殿も見当たらない。ただ青い扉が浮かんでいるだけ。
思い切って宙返りをしてみた。水の中にいるみたいで面白い。息は苦しくないけれど。
「このピースは…どこに?」
カナリアが扉を入ってくるのを待って、私はパズルを埋めるための穴を探した。
「あそこよ」
空の少女が、空の一角を指す。
彼女を追って私も空を歩く。ふわふわと雲のように漂いながら。鳥のように自由に、風の間を泳ぐ。
何か、トリックアートみたい。
でもここは空の上。私は今、地上より遥か高いところに浮いているんだ。
「…あった」
目的地は一目瞭然だった。
晴れた空と白い雲の間に一箇所だけ、何もない空間があった。
周りの空の色とは一段階薄い青色。地上からでは気がつかないかもしれないけれど、こんなに近くから見ればよく分かった。
抱えた破片と、目の前に開いた大きな穴を見比べる。私なんか簡単に吸い込まれてしまいそうなほど、大きなパズルの穴だった。
「ちゃんと向きも考えて、傷つけないようにね」
「うん。分かった」
私はパズルに両手を添えて、そっと穴に当てる。
これで終わり。今日一日の奇妙な探索も、全て終わり。
何もかもが元通りになる。
「…あれ?」
この穴で合ってるはずなのに、どう向きを変えても破片は空に収まらなかった。
ピースをくるくると左右に回しながら、ぴったりはまる場所を探す。
おかしいな。これで間違いないはずなのに。
「なってないわね。逆よ逆。裏返し」
空の少女が溜め息をついた。
私は慌ててピースを確かめた。
本当だ、手元の破片と青空の模様が合わない。雲の流れる向きが逆だ。あはは、と笑ってごまかす。カナリアが呆れたように首をすくめた。
「じゃあ、今度こそ行くよ」
破片をくるっと裏返しにして、あらためて空の穴に重ねる。
今度こそ。慎重に、壊してしまわないように。
パズルの形をした穴に破片を当てて、そして、ゆっくりと押し入れる。
これで終わり。
長い長い土曜日も、欠けた空も。
空は、私のものから、皆のものへと戻る。
皆で守るべきものへ。
そして、
…ぱちん。
パズルのピースがはまる音がした。
私は手を離す。
小さくて可愛い、乾いた音だった。
そして私は、私の体は、急降下を始めた。
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