むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
「おはよう、結衣」
月曜日の朝。私は教室で智美と顔を合わせた。
「あ…おはよ」
意味ありげな表情で私の元へやってくる。
そしてこちらに右の手のひらを見せる。まるで誰かの仕草みたいで、一瞬ぎくりとした。彼女はニヤリと笑った。
「ケーキ代」
智美の話によると、土曜日、紛れもなく私は彼女達と会ったらしい。カフェのテラスで外国人の少女とケーキを食べていたと。
つまりあれは、あの出来事はやっぱり現実。
空の破片を探す少女に会って、冬から破片を取り返して。空に昇って、破片を元に戻して。挙句の果てには空を落ちた。
目まぐるしかったけど、死ぬかもと思ったけど、あれが全て夢だとは思いたくなかった。
むしろ、絶対に経験できないことをたくさん出来て楽しかった。
確かに、たいへんではあったけれど。
「今日も、空は綺麗」
あれからもう1ヶ月。季節はとっくに夏に変わっていた。
広い空には入道雲。焼け付くような太陽の陽射し。夕方になれば、鮮やかな夕陽。
私は、いつものように家に帰りついた。
今日も平和だ。空に比べれば、少しスリルに欠けるけど。
今頃、どうしてるかな?
夏の仕事で忙しかったりするのかな。
玄関の前にやってきてドアノブに手をかける。すると、背後から誰かが私を呼んだ。
「サキ」
私は弾かれたように振り返る。
聞き覚えのある声、聞き覚えのある妙な呼び方。
「うそ…っ!」
私の顔を見るなり、彼女は微笑んだ。懐かしい顔だった。
「どうして、ここに?」
「挨拶はないの? まったく、相変わらずなってないわね」
少し気の強そうな態度と、鈴を転がす声。
空色の長い髪、夕陽色の瞳。紺色のワンピース。そしてその肩には、一羽の真っ白なハト。
「冗談だよ」
私もクスリと笑い返した。そして、ノブに伸ばしていた手をそっと下ろした。
それから時計を見る。うん、あのカフェが閉まるまでは、まだ時間がある。
「じゃあとりあえず、ケーキでもどう?」
月曜日の朝。私は教室で智美と顔を合わせた。
「あ…おはよ」
意味ありげな表情で私の元へやってくる。
そしてこちらに右の手のひらを見せる。まるで誰かの仕草みたいで、一瞬ぎくりとした。彼女はニヤリと笑った。
「ケーキ代」
智美の話によると、土曜日、紛れもなく私は彼女達と会ったらしい。カフェのテラスで外国人の少女とケーキを食べていたと。
つまりあれは、あの出来事はやっぱり現実。
空の破片を探す少女に会って、冬から破片を取り返して。空に昇って、破片を元に戻して。挙句の果てには空を落ちた。
目まぐるしかったけど、死ぬかもと思ったけど、あれが全て夢だとは思いたくなかった。
むしろ、絶対に経験できないことをたくさん出来て楽しかった。
確かに、たいへんではあったけれど。
「今日も、空は綺麗」
あれからもう1ヶ月。季節はとっくに夏に変わっていた。
広い空には入道雲。焼け付くような太陽の陽射し。夕方になれば、鮮やかな夕陽。
私は、いつものように家に帰りついた。
今日も平和だ。空に比べれば、少しスリルに欠けるけど。
今頃、どうしてるかな?
夏の仕事で忙しかったりするのかな。
玄関の前にやってきてドアノブに手をかける。すると、背後から誰かが私を呼んだ。
「サキ」
私は弾かれたように振り返る。
聞き覚えのある声、聞き覚えのある妙な呼び方。
「うそ…っ!」
私の顔を見るなり、彼女は微笑んだ。懐かしい顔だった。
「どうして、ここに?」
「挨拶はないの? まったく、相変わらずなってないわね」
少し気の強そうな態度と、鈴を転がす声。
空色の長い髪、夕陽色の瞳。紺色のワンピース。そしてその肩には、一羽の真っ白なハト。
「冗談だよ」
私もクスリと笑い返した。そして、ノブに伸ばしていた手をそっと下ろした。
それから時計を見る。うん、あのカフェが閉まるまでは、まだ時間がある。
「じゃあとりあえず、ケーキでもどう?」
Fin.
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詳しくはFirstを参照ください。
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