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むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
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 長いローブを着たその様子は、魔法使いのように見えました。そしてさらにその姿にぴったりの、ふしのついた白い木の杖で土を叩きました。
 シャン、シャン、と、杖の飾りについた、澄んだ鈴の音がします。
 その音はあちらこちらで木霊して、遠くまで響いていきました。

 それを黙って聞いていたローリエさんは、木霊が聞こえなくなるのを待って頷きました。


「ああ、流れているね。それは川を下り、森をも抜けた。そして海に。川を出た水は波の流れに乗って、入り江にたどり着く。探し物はそこで見つかるだろう」


「ありがとうございます」

 セシルはまた、深く深く会釈をしました。
 ローリエさんはふわりと微笑んで、

「礼には及ぶことではないよ。どれ、森の外まで送ろう」

 ローリエさんは私たちの前に立って、深い森を進んでいきました。

 彼が歩くと、うっそうとした森の中に、月の光に照らされた道が出来ました。
 まるで、森の木々達が月の光を招き入れているようでした。


 いくらも歩かないうちに、私たちは森を抜けることができました。


「二人とも、気をつけていきなさい」
 ローリエさんは森の出口まで来ると、私たちに手を振って見送ってくれました。

 今夜は不思議なことばかり起こります。
 それとも夜の世界とはこういうものなのかしら。



「さっきの人は?あのひとも竜?」

「いや。あれは森の精霊だ。もっとも、竜も霊のようなものだけどね」

 セシルは少し難しそうなことを言いました。
 私にはよく分からなかったけれど。

 聞きたいことは山積みでした。
 どうしてセシルは竜や精霊を知っているのだろう?
 まるで、昼間に聞いた物語のようだわ。

「さあ、次は海だ。少し急がないと。もうじき夜が明ける」

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