むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
人を愛するということは、どんなに汚れていて醜いか。
それを映すのは彼女の笑みであり、消えることのない電球だった。
人を愛するということは、どんなに妖艶で気高いか。
それを映すのは沈静な池であり、二度と聞こえないバイクの音だった。
ほら、みてごらん。
彼は言った。
『愛情とは、どこか謎めいた戦利品に酷似している。』
花は植物の中で一番醜く、その偽善は回りくどい蜜の香で獲物を呼ぶ。
『愛されていることを知らぬ人間だけが、愛情が無限だと期待する。』
彼は詠った。
『ごらん、溢れ出るこの赤いもの……、これは、何だろう?』
私は首を振った。
わからない。
涙が溢れる。その血よりも濁った涙が。
この熱は呪い。自らの罪への自らの咎。
私は…僕は裏切ったのだ。知らずして彼を失望に追いやった。
わからない。それは今も変わらない。
あの接吻の意味を、あの流れ出る赤いものを。
『よくごらん』
『これが、僕だ』
転々と続く赤、美しく赤く冷たい、限りなく綺麗な真円。
けれど池の水は赤くない。
赤いのは、水面の映し出す空。
そして冷たいのは――
忘れられぬあの夢。恐ろしい夢。
どんなに深い傷でも、やがて治ってしまうと私は知っている。
忘れることを許さないのは自分か、あの池に眠る彼の赤か。
忘れるのかと、その瞳が私を見送る。
そう、おそらく私は彼を忘れていくのだろう。
――森博嗣『河童』を読んで
※作中の単語・表現を多数織り込みました。
参照頁は割愛させて頂きます。
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詳しくはFirstを参照ください。
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