忍者ブログ
むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
[48]  [47]  [46]  [45]  [44]  [43]  [42]  [41]  [40]  [39]  [38
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 入り江には、また私とセシルだけになりました。

 ザザン。
 夜の入り江に、大きく波の音だけが響き渡ります。

「……ごめんなさい」

 私がそう呟くと、セシルは怪訝そうに私を振り返りました。

「セシルの大事な絵の具なのに、結局返せなかった」

 どうして落としてしまったんだろう。
 そう思うと泣きたくて仕方がありませんでした。

「いいんだよ。実はね、僕はなんとなくそうじゃないかって分かってたんだ」

 ぽろぽろと涙が浮かんでは落ち、波の間にとけていきます。

「じゃあどうして…」

「言ったろう? 君は意外と頑固だって。頭ごなしに否定するより、自分の目で見た方がいい。それに」

 彼は微笑んで私の頭をぽんぽんと叩きました。
 それを合図にしたかのように、私の涙が止まりました。

「なくなったのならもう一度取ればいい。丁度夜明けだ。おいで、アリシア。色を取る所を見せてあげよう」

 そう言って、セシルは私を日の出の見える浜辺へ連れて行きました。

 セシルの言うとおり、東の空がうっすら白くなっていました。
 海の向こうに、太陽が顔をのぞかせていました。

 夜が明けたのです。

 

 それにしても「色を取る」なんて、セシルも不思議なことを言うわ。

 波打ち際に近寄り、セシルは空になった瓶に海水を汲みました。
 何をしているのだろう、と静かに見つめる私に笑いかけて、セシルはその瓶を出てきたばかりの太陽かざしました。

 すると、瓶の中の海水が光を反射してキラキラと輝きだしました。
 
 私はあっ、と息を呑んみました。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
name
title
color
mail
URL
comment
password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
Welcome
冬に包まれる季節。
詳しくはFirstを参照ください。
つぶやき
ブログ内検索

プロフィール
HN:
朝斗 〔あさと〕
性別:
非公開
趣味:
読書、創作、カラオケ、現実逃避
のうない
最古記事
はじめてのかたは此方から。
最新コメント
メモマークは『お返事有り』を表します。
[05/09 彗花]
[05/07 天風 涼]
[05/06 朝斗]
[05/06 朝斗]
[05/06 朝斗]
バーコード
もくそく
Powered by Ninja Blog Photo by COQU118 Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]