むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
それは、この大地の出来事ではなく、遥か天上にある空の街の話。
雲上に隠されたその街の入口には、大きな門がある。出るのは自由な街だが、入るにはその門をくぐる他に方法はない。
ある年、新たな門番が役職に就いた。鮮やかな翡翠色の髪と瞳を持つ青年である。
「さて…今日もいい空だなぁ」
人間界の尺度で言うと見た目18~9歳の彼は、数年の見習い期間を経て、今季から正式にこの門を守る門番になった。
彼の名をジェイド。
その髪と瞳に相応しい、宝石の名を持つ青年だ。
中央に純白の宮殿を据えたその街は、空を司る場所。
雨を降らせ、雲を流し、風を吹かせ、陽光を照らす。滞りなく季節を廻らすのが、街に住まう者の役目。
「しっかり仕事してるみたいだな」
ジェイドが鳥の数の確認をしていると、宮殿の方から一人の青年がやってきて、彼に声をかけた。
「ハル!もう冬からの引継ぎは終わったのかい」
若葉色の髪を後ろで束ねたその青年は、ハル。春を司る者の一人で、ジェイドの昔からの友人でもある。
ハルは呆れたように彼を見た。
「数日前にな。『冬』が帰るところを見なかったのか?」
「ああそういえば、冬の鳥も残らず返っていたかな」
ジェイドは、門の鍵となる『鳥』達が既に飛び去った後だったのを思い出した。彼の暢気さに溜め息をつく春の司者。
「お前はイマイチ詰めが甘い」
ふと、ハルの背後で紺色の何かがひらひらと動いた。
それに目をやって、ジェイドが尋ねる。
「その子は…?」
馴染みの春の司者の後ろに、小さな少女が隠れていた。空色のゆるいウェーブ髪とカナリア色の瞳。揺れていた紺色は、彼女が纏っていたワンピースの色だった。幼い少女は、人間で言う所の10歳前後といったところか。
「空の見習いだ。将来は春夏のサポートの役目に就く」
「で、キミが世話係というわけか」
ハルは背後から少女を引っ張り出して、ジェイドに紹介した。
「綺麗な瞳だね。鮮やかなカナリア色だ」
空見習いの少女は、目の前に立つ門番を見て緊張したまま動かない。そんな彼女にジェイドはにこりと笑いかける。
「ほら、挨拶は?」
それでも黙ったままの少女を、ハルが促した。すると、やっと小さな声が発せられる。
「…はじめまして…」
大人しい少女を警戒させないよう、ジェイドは目線を合わせ、優しく笑いかけた。
するとやっと、少女もはにかむ様に微笑んだのだ。
「初めまして。僕は門番のジェイドだよ。君の名前は?」
「…カナリア」
新米の門番と、小さな空の司者。
それが、二人の出会いだった。
雲上に隠されたその街の入口には、大きな門がある。出るのは自由な街だが、入るにはその門をくぐる他に方法はない。
ある年、新たな門番が役職に就いた。鮮やかな翡翠色の髪と瞳を持つ青年である。
「さて…今日もいい空だなぁ」
人間界の尺度で言うと見た目18~9歳の彼は、数年の見習い期間を経て、今季から正式にこの門を守る門番になった。
彼の名をジェイド。
その髪と瞳に相応しい、宝石の名を持つ青年だ。
中央に純白の宮殿を据えたその街は、空を司る場所。
雨を降らせ、雲を流し、風を吹かせ、陽光を照らす。滞りなく季節を廻らすのが、街に住まう者の役目。
「しっかり仕事してるみたいだな」
ジェイドが鳥の数の確認をしていると、宮殿の方から一人の青年がやってきて、彼に声をかけた。
「ハル!もう冬からの引継ぎは終わったのかい」
若葉色の髪を後ろで束ねたその青年は、ハル。春を司る者の一人で、ジェイドの昔からの友人でもある。
ハルは呆れたように彼を見た。
「数日前にな。『冬』が帰るところを見なかったのか?」
「ああそういえば、冬の鳥も残らず返っていたかな」
ジェイドは、門の鍵となる『鳥』達が既に飛び去った後だったのを思い出した。彼の暢気さに溜め息をつく春の司者。
「お前はイマイチ詰めが甘い」
ふと、ハルの背後で紺色の何かがひらひらと動いた。
それに目をやって、ジェイドが尋ねる。
「その子は…?」
馴染みの春の司者の後ろに、小さな少女が隠れていた。空色のゆるいウェーブ髪とカナリア色の瞳。揺れていた紺色は、彼女が纏っていたワンピースの色だった。幼い少女は、人間で言う所の10歳前後といったところか。
「空の見習いだ。将来は春夏のサポートの役目に就く」
「で、キミが世話係というわけか」
ハルは背後から少女を引っ張り出して、ジェイドに紹介した。
「綺麗な瞳だね。鮮やかなカナリア色だ」
空見習いの少女は、目の前に立つ門番を見て緊張したまま動かない。そんな彼女にジェイドはにこりと笑いかける。
「ほら、挨拶は?」
それでも黙ったままの少女を、ハルが促した。すると、やっと小さな声が発せられる。
「…はじめまして…」
大人しい少女を警戒させないよう、ジェイドは目線を合わせ、優しく笑いかけた。
するとやっと、少女もはにかむ様に微笑んだのだ。
「初めまして。僕は門番のジェイドだよ。君の名前は?」
「…カナリア」
新米の門番と、小さな空の司者。
それが、二人の出会いだった。
* * *
はじまりの挨拶。
お久しぶりです。
はじめてのかたには、初めまして。
随分と引っ張った連載、ついに開始です。
『透色景色』
-スキイロケシキ-
過去の連載『空色パズル』の姉妹作品となっております。
タイトルの響きも近いものにしてみました。
とは言っても、『空色』を読んでいなくとも問題なく読めるように作ったつもりです。安心して読んでくださいませ。
もちろん、『空色』も読んでくだされば嬉しい限りです。
今回はなんとなく三人称で創作。昔は好んで複数称を使っていたのですが、最近の作品はめっきり一人称。まだ少し慣れません。
舞台は空の上。主人公は新米門番の彼ということになります。完璧にファンタジーとなります。
それでは、門をくぐって。
不思議な空の街へ、ようこそ。
はじまりの挨拶。
お久しぶりです。
はじめてのかたには、初めまして。
随分と引っ張った連載、ついに開始です。
『透色景色』
-スキイロケシキ-
過去の連載『空色パズル』の姉妹作品となっております。
タイトルの響きも近いものにしてみました。
とは言っても、『空色』を読んでいなくとも問題なく読めるように作ったつもりです。安心して読んでくださいませ。
もちろん、『空色』も読んでくだされば嬉しい限りです。
今回はなんとなく三人称で創作。昔は好んで複数称を使っていたのですが、最近の作品はめっきり一人称。まだ少し慣れません。
舞台は空の上。主人公は新米門番の彼ということになります。完璧にファンタジーとなります。
それでは、門をくぐって。
不思議な空の街へ、ようこそ。
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