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むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
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「Trick or treat!」
 
 窓の外、近所のどこかの騒ぎ声が耳に届く。
 トリック・オア・トリート。ハッピーハロウィン。そんな日に風邪をひいているなんて、本当につまらない。俺は不貞腐れて、すっかり熱の下がった体で空を仰いだ。
 すると、何故だか女の子が宙に浮いている。
 
 それは別に彼女が木に登っているとかそういうことじゃなくて、月の弱い光の下、女の子がホウキにまたがってふわふわしているのだ。しかもハロウィンらしく、黒いマントをまとって。
 
 ホバリング、っていうんだっけ。
 夢ともまぼろしともつかないままで、数メートル先に浮かぶ彼女をぼんやりと見る。
 すると女の子も俺の存在に気がついたらしく。ばっちり目と目があってしまった。

 
「あれ、見つかっちゃった」
 女の子は焦るでもなく、ちょっと意外そうに俺を見つめ返す。
 
「驚かないの?」
 黒いマントの中で女の子は首をかしげる。
 俺はというと、それにそっけなく返事をするだけ。
 
「だって、魔女だろ」
「まぁそうだけど。あ、じゃあ、これ」
 
 目の前に差し出された右手。
 促されるままに手を伸ばすと、掌の上にコロリとなにかが落とされた。
 
「あげる。お大事にね」
 
 そしてまた風のように飛んでいく。
 風のやんだ夕闇にはもう誰もいなくて、まるでそこに最初から誰もいなかったように静かだった。
 月光に照らしてみると、掌に残ったのはカラフルな包み紙。捻り目を開いてみると中からオレンジ色の飴玉が出てきた。
 
 精霊からお菓子を貰うなんて変な話だ。
 俺はそれを口に放り込んで、クスクスと笑った。
 

End.

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詳しくはFirstを参照ください。
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