むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに
ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。
過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
「――依。未依?」
目を開けると、真っ白な天井。そして、心配そうに覗きこむ瑞希の顔。
「良かったぁ。気がついた」
瑞希?そう呼ぶと、彼女は安堵の息を漏らし、それからにこりと微笑む。
ぱちぱちと、目を瞬かせる。
どうやらここは、学校の保健室らしい。
「貧血だって。寝不足?朝食べて来た?」
「包帯…」
「落ちた時にね、捻ったみたいだって」
手首に巻かれた白い布。試しに動かしてみると、かすかにズキリと痛みが走った。
落ちた?私、どうしたんだっけ。
それから段々と、階段を落ちたのだという事実を思い出す。前後の記憶ははっきりしないけれど、確か、足を滑らせて。
まだ、頭の中がぼんやりしていた。
「心配したよう。未依全然目ぇ覚まさないんだもん」
少し拗ねたような瑞希の顔を見て、私の心はすっと軽くなった。
「そっかぁ。ごめんね、迷惑かけて。ずっとついててくれたの?」
そうだよ、と頷く彼女の笑顔が温かかった。
その屈託のない笑みに、見知らぬ少女の笑顔が重なった。
満面の笑み。瑞希とその少女とで決定的に違うのは、なんだろう。
どこかで見たような。ついさっき、会ったことがあるような。
ああ、そうだ。階段を落ちる直前に出逢った、あの笑顔だ。私は彼女に、何と言われたんだっけ。
良く思い出せない。いったいあれは何だったんだろう。
ぼんやりと頭の片隅で考えながら、寝ぼけていたかな、と首を傾げる。
「ちゃんと気をつけないと。だって今回は」
どこかで、チャイムの音がした。
廊下を歩く生徒の足音が…すごく遠い。
「語尾を少しだけ、間違えただけだもんね」
「…瑞希?」
彼女の言葉に、笑顔が凍りつくのが分かった。
目を開けると、真っ白な天井。そして、心配そうに覗きこむ瑞希の顔。
「良かったぁ。気がついた」
瑞希?そう呼ぶと、彼女は安堵の息を漏らし、それからにこりと微笑む。
ぱちぱちと、目を瞬かせる。
どうやらここは、学校の保健室らしい。
「貧血だって。寝不足?朝食べて来た?」
「包帯…」
「落ちた時にね、捻ったみたいだって」
手首に巻かれた白い布。試しに動かしてみると、かすかにズキリと痛みが走った。
落ちた?私、どうしたんだっけ。
それから段々と、階段を落ちたのだという事実を思い出す。前後の記憶ははっきりしないけれど、確か、足を滑らせて。
まだ、頭の中がぼんやりしていた。
「心配したよう。未依全然目ぇ覚まさないんだもん」
少し拗ねたような瑞希の顔を見て、私の心はすっと軽くなった。
「そっかぁ。ごめんね、迷惑かけて。ずっとついててくれたの?」
そうだよ、と頷く彼女の笑顔が温かかった。
その屈託のない笑みに、見知らぬ少女の笑顔が重なった。
満面の笑み。瑞希とその少女とで決定的に違うのは、なんだろう。
どこかで見たような。ついさっき、会ったことがあるような。
ああ、そうだ。階段を落ちる直前に出逢った、あの笑顔だ。私は彼女に、何と言われたんだっけ。
良く思い出せない。いったいあれは何だったんだろう。
ぼんやりと頭の片隅で考えながら、寝ぼけていたかな、と首を傾げる。
「ちゃんと気をつけないと。だって今回は」
どこかで、チャイムの音がした。
廊下を歩く生徒の足音が…すごく遠い。
「語尾を少しだけ、間違えただけだもんね」
「…瑞希?」
彼女の言葉に、笑顔が凍りつくのが分かった。
End...
PR
「高橋くんは、そうじゃない…もん…ね…?」
恐る恐る、後者を選択した私。
とっさに間違った、と思った。
しかし瑞希はそれを指摘したりはしない。「だよねぇ」と苦笑しながら相槌を返した。私はほっと息をつく。それから少し笑った。
当たり前だ。このゲームは私が勝手にしていること。間違ったからと言って、瑞希や他の人がそれを分かるはずがない。
だから私も、「でしょ?」と笑い返す。その時、擦れ違いざまに誰かが私に声をかけてきた。
「あ、ねぇねぇ」
階段の途中、歩きながらふと振り返る。
別の学年の女の子だろうか。そこには、顔なじみではない少女がいた。何か落としただろうか、と首を傾げる。
「今――間違ったでしょ?」
爽やかに微笑を浮かべる彼女の、セリフ。
「何…?」
見知らぬ少女は、私を見てニヤリと笑った。
そしてもう一度、背筋の冷たくなるような明るい声で。
「間違えた、でしょう?」
耳を疑った。
何を?
もしかして。まさか。
だってこれは、私ひとりのゲーム。それなのに。
どうして しっているの?
思わず後ろに下がる私の足が、階段を踏み外した。
がくり、と体が傾く。
とっさに手を伸ばすことも忘れて、身の縮まるような寒気が、全身を包んだ。
階段が……
落ちる、と思った。
けれど、それどころじゃなかった。
目に焼きついて離れないのは、少女の微笑み。
そこで意識は遠のいた。
瑞希が私の名前を叫んだ、気がした。
浅く続いていた夢を途切れさせたのは
あまりにも短い一言だった
ぼんやりした言葉に頭をゆらしながら
私は冷静にも階段を降りていった
声を頼りにたどりついた先に
のぼるのは一筋の煙
新しく出来た小さな丘の上に
ぱらぱらと命を繋いでいた花をまいた
――なんとなく予感がしていたんだ
涙を流す少女の後ろで そっと目をとじる
指先には 今も撫でたときの感触が残っているのに
もう その暖かさを確かめることはないんだね
しゃがみこんだ彼女をおいて
私は来た道を戻る
裸足にとどく濡れた感覚と
見渡した中にとびこんできた オレンジの花
さぁ帰ろう
青と白の嶋に身を包もう
そして君をおくるための言葉をつづろう
もう耳を澄ましても 君の声はしないけれど
(私は鈍いから
それに気づいて泣くのは まだずっと後かもしれないけれど)
だから今はせめて
こうして心穏やかに
君が居たはずの生きたはずの
小さな世界に想いを馳せていたいんだ
あまりにも短い一言だった
ぼんやりした言葉に頭をゆらしながら
私は冷静にも階段を降りていった
声を頼りにたどりついた先に
のぼるのは一筋の煙
新しく出来た小さな丘の上に
ぱらぱらと命を繋いでいた花をまいた
――なんとなく予感がしていたんだ
涙を流す少女の後ろで そっと目をとじる
指先には 今も撫でたときの感触が残っているのに
もう その暖かさを確かめることはないんだね
しゃがみこんだ彼女をおいて
私は来た道を戻る
裸足にとどく濡れた感覚と
見渡した中にとびこんできた オレンジの花
さぁ帰ろう
青と白の嶋に身を包もう
そして君をおくるための言葉をつづろう
もう耳を澄ましても 君の声はしないけれど
(私は鈍いから
それに気づいて泣くのは まだずっと後かもしれないけれど)
だから今はせめて
こうして心穏やかに
君が居たはずの生きたはずの
小さな世界に想いを馳せていたいんだ
In the sky after the rain.
大好きだったあの子へ、餞の言葉を。
大好きだったあの子へ、餞の言葉を。
Welcome
冬に包まれる季節。
詳しくはFirstを参照ください。
最新記事
(02/12)
(02/12)
(02/12)
(02/12)
(02/12)
メニュー
初めてのかたはFirstまたは最古記事から。
のうない
最古記事
はじめてのかたは此方から。
最新コメント
メモマークは『お返事有り』を表します。
もくそく