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むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
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「それを彼方さんは、こうして集めているんですね」

 僕の知るものと、店中に溢れる鳥達が同じものだとして、僕は相槌を打つ。

 不思議と、彼のしてくれた話をただの作り話だと切り捨てる気にはなれなかった。
 会ってまだ幾らも経過していないけれど、無意味な話を延々とするような人には見えない。口にすることには全て理由があり、意味がある、そんな気配を持つ人だ。
 彼は少し考える素振りをして、珈琲のカップを置いた。

「実を言うとね、僕は君にひとつ嘘をついた」

「え」

 思わず間の抜けた声を発する。彼は少しだけ悪戯っぽく口角をあげた。僕の反応を面白がっているようにも見える。

「本当はここは『小鳥屋』ではないんだ。鳥はたくさんいるけれど、店ではない」

「それって、どういうことですか?」

 僕はもう一度店の中を見渡した。馴染みある雀や鳩、鮮やかな鸚哥や金糸雀。こんなにたくさんの種類の鳥がいるのに、店ではない、と主人は言う。
 ではこの場所はなんだろう?浮かび上がる疑問を隠しきれずに首を捻る。店主は何気なく指を組んだ。

「売っているわけではない。つまりお金は戴いていないんだ」

 小さなカウンターの上に広がる、芳ばしい珈琲の香り。そして彼の声。
 謳いあげるように語るその声に、僕は黙って聞き入る。

「その鳥が本当に誰かの必要としているものならば、僕は何も貰わずに引き渡すことにしている。だって、鳥の持ち主はその人本人だからね。人のものを返すだけなのに、お金を取るようなことはしないよ」

 鳥の囁き声の向こうで雨の音がする。それは、先刻より随分優しげなものに変わっていた。
 この空間自体が紗幕に包まれているような感覚に陥る。

「そうか…だから看板に何も書いていないんですね」
 納得が言って尋ねると、店主は言葉の端で小さく頷いた。

「ただ、時折鳥を『買いに』来る客が居る。自分の鳥を探すことを放棄したか、諦めたか…とにかく、自ら見つけ出すことが出来ない人間は、似た物をこの店に買いに来る。そういうときはお金以外のものをお代にしている」

「お金以外のもの、というと…なんだろう」

 僕は再び首を傾げる。
 単純に物々交換ということだろうかと考えて、すぐ、この店のことだからそうではないのだろうと予想から外した。

 お金以外のもの。
 そしておそらく、単純ではない何か。

「なんだと思う?」

「うーん…時間、とか?」

「成程。惜しいね」

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本家のほうではやっている『あらすじ』、というか『紹介文』。

こちらは折角HTMLの使えるブログなので、タイトル一話目にカーソルを合わせると説明文が出るようにしておきました。

出ますよ、二行くらい。

ただ、『タイトルにカーソルを合わせると』なので気付かれない可能性大。
どうしようかな、どうせなら1話目のところでも浮かぶようにしておこうかな。


結構手ぇ加えるの好きなので(無駄な労力とも言う)、次はメニューをツリー化しようかと思ってます。

さて、今日は小説の更新どうしようかしら。


追記。
ツリー化しておきました。

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 メイドカフェの看板があるテナントビルの上階。
 掃除もロクにされていない事務所風の部屋は、閉め切られていたのか黴臭い。積み上げられた本の山は薄く埃が覆っている。

「まずは、お前の名前くらいは教えてもらおうか。それくらいは言えるだろ」

 常田は少年をソファに座らせ、肩に包帯を巻いてやりながら聞いた。

「…ユウ。幽玄の、幽霊のユウ」
「幽、ね」
 シャツに袖を通すのを見て、スーツのポケットから煙草を取り出す。少年はその様子を目で追いはしたが、何も言わなかったのでそのまま火を点ける。
「俺はアサトだ。植物の麻に、星の斗」
「随分風流な言い方だね。分かり辛いけど」
 まるで皮肉に聞こえない皮肉に常田が軽く笑う。
 先刻の場所から離れたことで、少年・幽も随分安定しているらしい。革のソファに身を沈めさせながら、じっと常田の行動を窺っている。どうやら警戒ではなく、好奇心のようだった。

「で。幽はこれからどうするつもりだ。『サーカス』ってのが何かは知らないが、少なくとも警察ではなさそうだな」
 常田の言葉にまた幽の顔色がわずかに曇る。


「あんた、探偵か何かなの」
「似たようなもんだ。…何か盗みでもしたか」
「盗みじゃない。守っただけ」
「逃げられるのか?」
「逃げたい」

 逃げたい、ね。腹の辺りで呟いてから、常田は紫煙を吐き出す。
 それから、改めて幽の容貌を眺める。

 外見は高校生くらい。けれど身に纏うものは制服ではなく、白のカッターシャツにジーンズ。足元は何故かサンダル。夜に出歩くにしては薄着過ぎる気がする。
 傷は思いのほか深くはなかったようで、応急処置でなんとか止血することができた。顔や腕も泥やら血やらを拭けば出血が続いている様子はなかった。それとも、彼のものではなかったか。
 追われていると言っていた以上、何か理由があるのだろうか。常田は自分の学生時代を思い出しながら自嘲気味に溜め息を吐いた。

「とにかく、拾ったよしみだ。朝までは匿ってやる。だから少し休むといい」
 今度は部屋の隅にあった毛布を放って促す。幽はそれに驚きつつも、目を細めながら頷いた。

「ありがとう。でもいいんだ、眠くないから」
「じゃあ、寝なくていいから横になっとけ」
 その余りにぞんざいな言葉に、初めて少年が笑った。

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冬に包まれる季節。
詳しくはFirstを参照ください。
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