忍者ブログ
むせ返るような芳香、甘い蜜。蝶のような優雅さで。 そのカラダに鋭い棘を隠して。
はじめに

ようこそ、偽アカシアへ。
こちらは私、朝斗の今までの作品展示室となっております。

過去作品から随時追加予定です。
同じものを掲載していますが、若干の推敲をしている場合もあります。
詳しくは『はじめに』をご一読ください。
2008.5.6 Asato.S
[45]  [46]  [47]  [48]  [49]  [50]  [51]  [52]  [53]  [54]  [55
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 その葛藤を、立華は悟ったのでしょうか。
 
「あるんだよ。この輪廻から抜け出す唯一の術が」
 
 その言葉に私はゆっくりと顔をあげました。そこに立っている、漆黒の姫。妖艶な輝きを持った深い瞳。

「ほんとう、に?」
 震える声で、そう尋ねました。
 
 立華は黄橙色の実をひとつ採り、私に差し出しました。
 つやつやと輝いて、ふわりと丸い、瑞々しい蜜柑の実。
 それはまるで、美しい魂を凝縮したかのような。

「食べるかい。食べるなら、お前に新しく名前をつけてあげよう」

 滑らかに言葉を噤む、真紅の唇。その赤に誘われるように、私はふらふらと近付いていきました。
 その道があるとしたら。
 私の望む道があるとしたら。

「けれど、これを食べたらもう元の場所には戻れないよ。輪廻の輪に戻りたくなっても、それはもう遅い。二度と叶わない。…それから…」

 憂いを込めた瞳が艶やかに嗤いました。
 私を誘(いざな)う、永久の美。朽ちることのない、永遠の御霊。
 私が畏れるもの。そして、求めるもの。
 

 私は手を伸ばしました。
 つんと甘い芳香が漂いました。
 

 


 世の中は既に宵の口に差し掛かっていました。
 その日は帰路につくのが遅くなって、僕は一人、暗い路を急いでいました。少し近道をしようと、しんと静まった裏路地を息をつめて急いでいたはずでした。
 それなのに今、僕が立っているのは、見知らぬ草原。
 
 どこだろう、ここは。
 たった一本生えた、白い花の咲く木。
 一面に咲き誇る、純白の曼珠沙華。
 
 早く去らなければ。早く帰らなければ。姉さんが独りで待っているはずだから。
 なのに、足が言うことをきいてくれません。
 
「だれ…?」
 
 声が聞こえた気がして、僕は周囲を見渡しました。目を凝らすと白い闇の向こうに誰かが佇んでいます。
 そして僕に向けられる、優しい囁き。
 
「おや、迷い子なの?」
 

 白銀の打掛けを纏った、儚く美しい女性でした。
 頭には真っ赤な八重咲き牡丹の花簪。
 まるで御伽噺の中から抜け出たような。
 近付くと、ほわり、甘い香りをさせていました。
 
 
 そのひとと出会ったのは、霧深い夜のことでした。
 初秋の空に雲はなく、はるか上空ではおぼろに月が輝いていました。

終.

拍手[0回]

PR

波の合間で歌を歌おう
貴方を想う愛の歌
 
二人の出会いはまるで嵐
雷のような光と衝撃
 
空回りなんて笑わないで
 
声が出なくなったとしても
気付いて貰えなかったとしても

この想いは 心は
泡になんてならないわ
貴方を幸せにするのは私
 
その隣に居られるのなら
二本の足で大地に立とう



*Den Lille Havfrue…人魚姫
童話シリーズ第5段。

拍手[0回]

「死ぬのは恐いかい」

 静かに立華が尋ねます。その深い色の瞳に負けぬように努めました。

「恐くはないわ。でも…」


 それが強がりなのかどうかも良く分かりませんでした。言葉を濁し、小さくなって肩を震わせるしかできません。
 
 私もまた、あのように美しくなれるのか。それもまたいいのかもしれません。
 そう、不思議と恐くはない。ただ、今はまだ死にたくない。

 
 だって私は。

『八重ちゃんは別嬪さんだね』


 そう言われて、持て囃されることが心地良い。羨まれることが嬉しい。

 私は知っているのです。自分の瑞々しさと、器量の良さを。他人が私を見て、なんと囁き合っているかを。

 まだ死にたくない。
 その一方で思うことは、
 これ以上年月を重ねたくはないという不安。

 いつからそれに気付いたかは覚えていない。けれど、絶世の美女と噂された母が次第に老いていく様子を見て、憂うのです。

『似合うのは今のうちだからね』

 私を待ち受ける道が、彼女と同じものなのか、と。
 それを怖れて、あの男のように一瞬の美しさに身をゆだねることも、また惜しい。どちらも愚かしい道に思えました。


「でも、私は…」


 怖くない、と答えることに躊躇して。
 そして、目の前の姫様を羨むのです。


 人でない彼女の美しさといったら。
 寿命に縛られない、彼女の羨ましさといったら。

拍手[0回]

Welcome
冬に包まれる季節。
詳しくはFirstを参照ください。
つぶやき
ブログ内検索

プロフィール
HN:
朝斗 〔あさと〕
性別:
非公開
趣味:
読書、創作、カラオケ、現実逃避
のうない
最古記事
はじめてのかたは此方から。
最新コメント
メモマークは『お返事有り』を表します。
[05/09 彗花]
[05/07 天風 涼]
[05/06 朝斗]
[05/06 朝斗]
[05/06 朝斗]
バーコード
もくそく
Powered by Ninja Blog Photo by COQU118 Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]